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気まぐれエッセイ『美しい羽』


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人生で1度だけ、フルマラソンを走ったことがある。
42㎞超の道のりに挑んだのは、「東日本大震災復興マラソン」という名前だったから。

めくるめく海沿いの景色を、トコトコと長い時間堪能した。

終盤のゴールまであと5㎞あたりが、本当に辛かった。
足が今にもとまりそう・・もうこのまま倒れて、担架で運んでもらいたい。

完走のための制限時間もあり、きっと間に合わない・・
私の中の力はすべて使い果たした・・もう何も残っていない・・

沈み始めた太陽が、私の心も道ずれにするようだった。
私よりずっと若い男性が、足の痙攣でうずくまり進めなくなった姿は、
やめるのに十分な理由として目に焼き付いてきた。

その時だ。

前方遠くから、私の名を叫ぶ誰かの声が小さく聞こえた。
その聞き覚えのある声に、勝手に涙腺が反応した。

声はどんどん大きくなり、力強い応援が私の隣までやってきた。

私が最も苦しいであろう地点を想像し、友人たちが待っていてくれたのだ。
そして、しばらく間、笑顔とともに並走してくれた。

不思議な「体感」だった。

からっぽの体に、エネルギーが満ちてゆくような。
きしんだ関節に、油をぽたりとたらされたような。

ふたたび動きだした足に、誰よりも私自身が驚いた。
まるで、美しい羽根を授けてもらったようだった。

時に、漬物石にもなりかねない「応援」の力。

本当の応援は、温かで軽やかな風として運ばれる。





by loveiysally-4970 | 2022-02-12 11:48 | 気まぐれエッセイ | Comments(0)

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