今日は、昔話です。
あれは、3番目のぴかりを妊娠していたころのこと・・
10年以上前の出来事です。父の4回忌に寄せて。
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大きなおなか、もうすぐ妊娠8カ月のわたし。
背中には、2歳のグズるたけのこをおんぶ。
足元には、4歳のみるくがしがみついて泣いていた。
笑顔がきえた表情のない顔で、わたしは乱暴にフライパンをふった。
専業主婦だったわたしの、おひるごはん準備。
子どもたち、妊婦のわたし、そして障がい者の父の分だ。
「なんで、わたしばっかり!!」
「横になって、やすみたい!!」
「一人旅にでも、でてしまいたい!!」
おなかはピーンと張るし、暑い日が続き、ひどい疲れに襲われていた。
幼い子どもたちの泣き声にも、イライラがふくらんだ。
普段なら、うちは弱者集団だねって笑えてたのに・・
(乳幼児・妊婦・障がい者)
子どもたちの世話、家事のすべて、50代半ばで中途障がい者になった父の介護。
母と夫は、仕事にでていた。
仕事のほうが、よっぽど楽に思えてしょうがない。
父は、静かに食卓にすわってお昼ごはんを待っていた。
脳梗塞の後遺症で言葉の障がいも重く、2歳のたけのこが先生になって教えていた。
(障がい者になる前は、経営コンサルタントで話すことが仕事だった)
なんとか、食事の準備ができた。
子どもたちをどやしながら、4人でテーブルにつく。
イライラ絶頂のわたしと対照的に、父はニコニコして車椅子に座っていた。
そして、わたしたちの顔をひとりひとりみつめると、
つたない言葉で、元気いっぱいに言った。
「いだだきばーす!!!」
言ったとたん・・
父の笑顔が、一気に崩れるのを見た。
そして、子どものように泣き出した。
動かない右手に目を落とし、左手で涙をぬぐい続けた。
それにつられて、
子どもたちは、火がついたようにギャンギャン泣き出した。
ハッとした・・
目には見えない何かに、心をわしづかみされ、
それと同時に、わたしの目からも涙が滝のようにあふれ出した。
4人で、泣いた。
海沿いの町の、父が建てた大すきな家の食卓で。
泣くだけ泣いて、落ち着いたら。
心に、そっと光りがさしてきた。
みんなで顔を見合わせて、今度は苦笑い。
さあ!もう一度。
「いただきまーす!!」
涙のあとがのこる弱者集団は、ごはんをもりもり食べはじめた。
お父さん!やっと文章にできた~10年もかかった、のんびり長女サリーだね。
自分のことしか見えないと、不幸がクローズアップ!フフフ・・その節は、ごめんなさいね。
神さまどうか。広い視野で、あたたかな世界を見れますように。